ロレックスを「価格が高い順」で並べると、宝石をふんだんに使ったデイデイトやデイトナのプラチナ/ゴールドモデルがトップを占め、その次にSS(ステンレス)のスポーツモデル(特にデイトナ、GMTマスターII、サブマリーナー)が続きます。ここまでは多くの方がイメージできる一方で、資産価値という観点を入れると話が少し変わります。「一番高いモデル=一番資産価値が高い」とは限らず、むしろ高額帯ほど“趣味性”が強くなり、流動性や出口(売りやすさ)の条件で評価が割れるケースが少なくありません。本記事では、前提として提示した“価格が高い順”の数値レンジをベースに、資産価値をさらに強く意識して、なぜ宝石モデルが資産向きではないのか、なぜSSデイトナが異常な資産価値を持つのか、そして価格帯別(300万/500万/1000万超)における合理的な選び方、資産重視の方が避けるべきモデルまで、鑑定士目線で具体的に深掘りしていきます。結論を先に言うと、資産価値は「価格の高さ」よりも「需要の広さ」「供給の少なさ」「相場の透明性」「再販ルートの厚み」で決まります。高額モデルほどこの4要素のうち“需要の広さ”が細くなりやすく、結果として資産としての安定感が落ちることがある、というのが現場で見えている現実です。

まずは「価格が高い順」全体像を整理する

今回の前提となる価格帯は以下です。①コスモグラフ デイトナ(宝石・プラチナ系)は定価目安約1,500万〜1,900万円、中古販売価格は1,800万〜2,500万円超。②デイデイト(プラチナ/宝石)は定価約1,300万〜1,800万円、中古販売価格は1,400万〜2,000万円前後。③デイトナ(SS)は定価約210万円、中古販売価格は400万〜500万円前後。④GMTマスターII(金無垢・コンビ)は定価約250万〜500万円、中古は350万〜700万円前後。⑤サブマリーナー(金無垢・グリーン系)は定価約480万〜600万円、中古は500万〜750万円前後。⑥ヨットマスター(エバーRG等)は定価約370万円、中古350万〜500万円。⑦シードゥエラーは定価約180万円、中古220万〜300万円。⑧エクスプローラーI・IIは定価約100万円前後、中古100万〜160万円。⑨オイスターパーペチュアルは定価約90万〜100万円、中古85万〜130万円前後(文字盤依存)。ここで重要なのは、価格が高い順に並んだとしても、資産価値は「中古が定価を上回っているか」「上回り方が継続的か」「売却時に買い手が多いか」によって逆転が起きるという点です。資産価値の文脈で最初に見るべきは、実は①②の超高額帯よりも③のSSデイトナであり、ここが“構造的に強すぎる”ため、多くの比較の基準になってしまいます。

宝石モデルが“資産向きでない理由”

まず、誤解を解きたいのは「宝石モデルは高い=資産価値が高い」という発想です。確かに、デイトナのプラチナや宝石モデル(例:126595TBR、126506)や、デイデイトのプラチナ/ダイヤモデル(例:228396TBR、228349RBR)は、価格帯としては2000万円級に達することもあり、見た目の豪華さも含めて“最高峰”の印象があります。しかし資産価値という観点では、ここには複数の落とし穴があります。第一に、買い手の母数が圧倒的に少ないことです。数百万円までのロレックスであれば「欲しい」という層が厚く、相場が透明で、売買が常に回っています。一方、2000万円級になると購入者層は急激に絞られ、再販ルートも限定されます。結果として、売却時に競争入札が起きにくく、価格が伸びる局面が限定されます。第二に、宝石の評価が“相場の透明性”を弱める点です。宝石モデルは、同じ型番でも個体のコンディション差、石のコンディション、流通の少なさ、好みの偏りで価格が大きく振れます。相場が読みづらい=資産としての安定性が落ちる、という構造です。第三に、価格形成がブランド価値+装飾価値で成り立つため、経済環境や嗜好の変化に左右されやすいことです。景気局面で「派手な時計」が敬遠されると、宝石モデルは真っ先に動きが鈍ります。第四に、資産価値で重要な“出口の強さ”が弱いことです。高く売れる可能性はあっても、売れるまでの時間がかかる、あるいは条件が合わないと売れない、というリスクは資産としては大きなデメリットになります。結果として、宝石モデルは「資産」よりも「嗜好品」「自己満足の最高峰」としての色が強く、資産運用としては不向きになりやすいのです。

それでも宝石モデルが強い瞬間がある

誤解がないように補足すると、宝石モデルが常に弱いわけではありません。例えば、極端に流通が少ない仕様、世界的に人気が集中するテーマ、特定のタイミングで富裕層需要が強まる局面では、短期的に大きく上振れすることがあります。ただし、この上振れは再現性が低く、「次も同じように上がる」という期待で買うと読み違えやすい領域です。資産価値の観点で重要なのは“平均して強いか”“下がりにくいか”であり、宝石モデルはそこが弱くなりがちです。

SSデイトナが異常な資産価値を持つ構造

資産価値を語るうえで、SSデイトナ(例:126500LN)が特別扱いされる理由は、その需要構造が他モデルと次元が違うからです。定価約210万円に対して中古販売価格が400万〜500万円前後という時点で、価格差は大きいのですが、本質は「高いのに売れる」ではなく「高くても買い手が途切れない」ことにあります。SSデイトナは、ロレックスの象徴であり、スポーツクロノグラフの頂点というストーリーが強く、世界中で需要が共通しています。日本だけでなく、海外市場でも“理解される価値”があり、為替や輸出入の動きがあっても、需要の芯が折れにくいモデルです。さらに、供給が需要に対して少ないため、相場は常に買い手優位になりにくい。加えて、相場の透明性が高いという強みもあります。市場参加者が多く、取引量が多いため、相場観が共有され、価格が極端に崩れにくい。これが資産としての最大の強みです。つまりSSデイトナは、①需要が広い(世界共通)②供給が少ない③相場が透明④出口が強い(売りやすい)という、資産価値の4要素をすべて高水準で満たしているため、他モデルより“構造的に強い”のです。

資産価値で見たときの「高い順」と「強い順」は別物

価格が高い順では宝石・貴金属モデルが上に来ますが、資産価値の強さ順では、SSデイトナが基準になり、その次にSSスポーツの人気モデルが続き、貴金属モデルは“選別が必要なゾーン”になります。つまり「買った瞬間から資産性が期待しやすいもの」と「所有満足度は高いが資産性は揺れるもの」を分けて考えることが重要です。ここを混同すると、価格が高いものを選んだのに、出口で苦戦するという事態が起こり得ます。

価格帯別(300万/500万/1000万超)での正解モデル

資産価値を強めに見たい場合、価格帯ごとに“勝ち筋”が異なります。まず300万円帯は、スポーツモデルの中でも比較的現実的に買えるゾーンで、シードゥエラー(126600:中古220万〜300万)や、条件次第のエクスプローラーI・II(中古100万〜160万)が入り、モデルとしては「値上がりを狙う」というより「大きく崩れにくい」ものを選ぶのが正解です。300万円帯で資産性を高めるなら、①付属品完備②状態良好③市場で回転があるモデル、という3点が優先です。次に500万円帯は、SSデイトナ(中古400万〜500万)がまさに該当し、資産価値重視なら最も分かりやすい“正解”になります。同じ帯域でGMTマスターII(コンビ〜金無垢の入口)やサブマリーナー金無垢モデルの一部が見えてきますが、資産性だけで言えば、やはりSSデイトナが突出します。500万円帯で次点を狙うなら、GMTマスターIIの中でも需要が広い仕様、サブマリーナーは人気色・人気仕様、というように“世界的に理解される仕様”を選ぶのがコツです。1000万円超は、宝石モデルやプラチナデイデイトが中心になりますが、ここは資産運用というより、嗜好品としての性格が強くなります。この帯域で資産性を意識するなら、①売却先の想定(どのルートで売るか)②需要が国際的にあるか③一点物性が強すぎないか、を事前に整理する必要があります。1000万円超で「値上がり」を期待するほど、出口の難易度も上がるため、資産というより“資産保全+嗜好”のバランスを現実的に見ることが大切です。

資産価値を重視する人が絶対に避けるべきモデル

資産価値重視の方が避けるべきなのは、「売却時の買い手が狭くなる要素」を持つモデルです。具体的には、①宝石要素が強すぎるモデル(価格が高い割に買い手が限られ、相場の透明性が低い)②流通が少なすぎて相場が読めないモデル(売却先によって価格が大きく変わる)③個体差の影響が大きすぎるモデル(コンディションや修理歴で評価が割れる)④ニッチな嗜好に寄ったモデル(好きな人には刺さるが一般需要が弱い)です。もちろん「避けるべき」と言っても、所有満足度を優先するなら話は別です。しかし資産価値を最優先にするなら、こうした要素は“出口を弱くする”ため、基本的には選ばない方が合理的です。特に宝石モデルは、買った瞬間から資産性が約束されるのではなく、景気や嗜好で値動きが変わり、売却に時間がかかる可能性があるため、資産としてはリスクが高くなります。

「高額=強い」ではなく「売りやすい=強い」

資産価値の本質は、保有中に誇れることではなく、必要なときに“適正な価格で現金化できるか”にあります。この観点で見ると、SSデイトナは非常に強く、次に世界的に需要のあるSSスポーツが続きます。貴金属モデルは、素材価値が下支えにはなりますが、それ以上に嗜好性が強く、資産としての安定性はモデル選別が必須です。つまり、価格が高い順に並べたランキングをそのまま資産価値ランキングと勘違いしないことが、最も重要なポイントです。

まとめ

ロレックスを価格が高い順に見ると、宝石・プラチナ系のデイトナやデイデイトが頂点に来ます。しかし資産価値という観点では、宝石モデルは買い手が狭く相場の透明性も弱いため、必ずしも資産向きとは言えません。一方でSSデイトナは、世界共通の需要、供給の少なさ、相場の透明性、出口の強さという資産価値の条件を高水準で満たし、“異常なほど強い構造”を持っています。価格帯別に見ると、300万円帯では崩れにくさ重視、500万円帯ではSSデイトナが最も合理的、1000万円超は嗜好性と出口を踏まえた慎重な選別が必要です。資産価値を重視するなら、価格の高さに引っ張られず、売りやすさと相場の読みやすさを軸に判断することが、後悔のない選択につながります。ブランドレックス 鑑定士 千藤