ロレックスには「人気モデル」「高騰モデル」がある一方で、不人気と呼ばれたり、査定が思ったほど伸びないモデルも確かに存在します。ただし、ここで重要なのは“不人気=価値がない”“売れないモデル”という単純な話ではないという点です。実際の査定現場では、多くのモデルが売却自体は成立します。ただし、なぜ価格が伸びにくいのか、なぜ同じロレックスでも評価が分かれるのか、その構造を理解していないと「ロレックスなのに安い」「期待していた金額と違う」という不満が生まれやすくなります。本コラムでは、特定のモデルを貶す目的ではなく、鑑定士の現場判断として“査定が伸びない理由”を構造的に整理し、不人気とされやすい傾向の正体を明確にします。売却前にこの視点を持っているかどうかで、判断の質は大きく変わります。

「不人気モデル」という言葉の正体

まず前提として、ロレックスに「本当に売れないモデル」はほぼ存在しません。問題になるのは、①需要層が限定的であること、②同型番の流通量が多いこと、③価格帯と実需のバランスが合っていないこと、この3点が重なったモデルです。市場ではこれを便宜的に“不人気”と呼びますが、正確には「価格を強く評価できる条件が揃いにくいモデル」と言い換えるべきです。査定は“ブランド価値”ではなく、“次に買う人がいくらで、どれだけ早く買うか”を基準に決まります。その前提を押さえずに人気・不人気を語ると、判断を誤ります。

査定が伸びない最大の理由①:需要層が狭い

誰が買うのかが明確でないモデル

査定が伸びにくいモデルの多くは、「欲しい人が限定的」です。例えば、デザインが強く個性的なモデル、サイズが極端なモデル、用途が限定されるモデルなどが該当します。エアキング、ヨットマスターII、ミルガウスなどはその代表例として語られやすいですが、問題はデザインの良し悪しではありません。重要なのは「次の買い手がどれくらい存在するか」です。万人受けしないモデルは、買取後に在庫として抱えるリスクが高くなり、結果として査定は保守的になります。

“好きな人は好き”は査定では武器にならない

売却時によく聞く言葉が「これは分かる人には分かるモデルですよね」というものです。しかし査定現場では、その“分かる人”の人数と動きやすさがすべてです。数が少なく、購入タイミングが読めない層しかいない場合、いくら完成度が高くても価格は伸びません。逆に、デイトナやサブマリーナーは“特別に詳しくなくても欲しい人”が多く、需要層の厚みが圧倒的です。この差が査定差として現れます。

査定が伸びない理由②:流通量が多すぎる

「人気がない」のではなく「市場に溢れている」

査定が伸びない理由として非常に多いのが、流通量過多です。特定のデイトジャスト、コンビモデル、特定文字盤のレディースモデルなどは、決して需要がゼロではありませんが、常に市場に在庫が存在します。つまり「今すぐ買わなくても選べる状態」が続いているため、価格競争が起きやすい。業者側も“急いで高値で仕入れる理由”がなくなり、結果として査定は抑えられます。

同型番・同仕様が多いと“差別化”ができない

査定では、次の売却価格だけでなく「他とどう違うか」が重要です。しかし、同じ型番・同じ文字盤・同じブレス仕様が大量に出回っている場合、差別化が難しくなります。結果として、状態が多少良くても“相場の平均値”に引き寄せられる。これはオーナー側の管理努力とは別次元の、市場構造の問題です。

査定が伸びない理由③:価格帯と実需のミスマッチ

高い=価値がある、ではない

不人気とされやすいモデルの中には、定価や素材的には高額なものも多く含まれます。金無垢モデル、宝石装飾モデル、特殊仕様などが典型です。これらは製品としての価値は高い一方で、実需が限られます。実際に“使いたい人”が少なく、購入動機が弱いため、売却時には価格の割に動きが鈍くなりがちです。結果として「高いのに査定が伸びない」という違和感が生まれます。

宝石モデルが評価されにくい構造

ダイヤ入りモデルや宝石ベゼルは、一見すると資産価値が高そうに見えますが、売却ベースでは評価が割れます。理由は明確で、①好みが極端に分かれる、②サイズ調整や修理コストが高い、③再販先が限定される、という3点です。結果として、査定は“素材価値+α”に近づきやすく、プレミアムが乗りにくい。資産価値を期待して購入した場合、ここでギャップが生まれます。

査定が伸びない理由④:モデル内での“立ち位置”が弱い

ブランド内の象徴モデルかどうか

ロレックスの中でも、ブランドを象徴するモデルと、そうでないモデルがあります。デイトナ、サブマリーナー、GMTマスターIIは“ロレックスらしさ”の象徴であり、語られ続ける存在です。一方で、ターノグラフ、チェリーニ、旧世代のドレス寄りモデルなどは、ブランド内でのストーリー性が弱く、需要が継続しにくい。この“語られ続けるかどうか”が、長期的な査定評価に影響します。

モデルチェンジで役割を失ったケース

新型が登場したことで、旧型の立ち位置が曖昧になるケースもあります。必ずしも価値が下がるわけではありませんが、「あえて旧型を選ぶ理由」が説明しづらいモデルは、売却時に評価が伸びにくくなります。逆に、明確な個性や希少性がある旧型は評価が残ります。つまり“旧いかどうか”ではなく、“意味が残っているか”が重要です。

査定が伸びない理由⑤:状態・付属品の影響が過小評価されている

人気がないモデルほど状態差が響く

不人気とされやすいモデルほど、状態差が価格差に直結します。人気モデルであれば多少の傷や付属品欠けがあっても買い手が付きますが、需要が限定的なモデルではそうはいきません。ラグの研磨、ブレスの伸び、バックル傷、保証書欠けなどがあると、買い手がさらに限定され、査定は一段階下がります。これはモデルのせいではなく、市場心理の問題です。

「ロレックスだから大丈夫」という思い込み

ロレックスは確かに強いブランドですが、すべてのモデルが同じ耐性を持つわけではありません。特に不人気寄りのモデルでは「ロレックスだから高いはず」という期待が裏切られやすい。売却前に状態を整え、付属品を揃えるだけでも、着地は大きく変わります。

不人気モデル=失敗、ではない

使う前提なら合理的な選択になる

ここまで“不人気モデル”の構造を説明しましたが、これは購入否定ではありません。むしろ、価格が落ち着いているモデルは“使う前提”であれば非常に合理的です。過剰なプレミアを払わずにロレックスを楽しめるという意味では、満足度が高いケースも多い。ただし、資産価値や売却時の伸びを期待する場合は、向き不向きを理解した上で選ぶ必要があります。

売却を見据えるなら“理由があるモデル”を選ぶ

売却を前提に考えるなら、「なぜそのモデルが評価されているのか」を説明できるかが重要です。人気がある理由、需要が続く理由、代替が効きにくい理由。このいずれかが弱いモデルは、相場が落ち着いた局面で評価が伸びにくくなります。不人気とされるモデルの多くは、この説明が難しいだけで、品質が低いわけではありません。

まとめ:査定が伸びないのは“モデルの欠点”ではなく“市場構造”

ロレックスの不人気モデルや査定が伸びない理由は、ブランド価値の問題ではなく、市場構造と需要の話です。需要層が狭い、流通量が多い、価格帯と実需が合わない、ブランド内での立ち位置が弱い、状態差が響きやすい。これらが重なると、査定は伸びにくくなります。重要なのは、売却前にこの構造を理解し、自分のモデルがどこに位置しているかを把握することです。そうすれば、「なぜこの金額なのか」「どうすれば条件が良くなるのか」が見えてきます。売却を迷っている方は、人気・不人気という言葉だけで判断せず、現実的な評価軸で整理することが、後悔しない判断につながります。

ブランドレックス
鑑定士 千藤