高級時計を「今買うべきか」で迷われる方が増えている理由は明確で、定価改定が継続し、為替や海外需要の影響で中古相場の“勝ち負け”がモデル単位でより鮮明になったからです。ただし、鑑定の現場で断言できるのは「高級時計=資産」ではないという点です。資産として成立するのは、市場での流動性(売るときに成立しやすい厚い需要)と、中古価格の安定性(崩れにくい需給構造)を同時に満たすモデルだけです。本記事では、2026年時点の国内市場を前提に、資産価値が落ちにくいモデルの“選び方”を、定価改定の実例と、具体型番の定価・相場レンジを交えながら整理します。

結論:今買うなら「資産性が落ちにくい型番条件」を満たすモデルに限定すべき

結論から申し上げると、今でも高級時計は買う価値があります。ただし条件があります。買う価値があるのは「資産性が落ちにくい条件」を満たすモデルに限られ、条件を外すと“高額な消費”になりやすいという点です。特に相場が落ち着いた局面では、ブランド名よりも型番、仕様、付属品の揃い方が結果を分けます。逆に言えば、条件さえ押さえれば、身につけながら価値を維持しやすい数少ない実物資産になり得ます。

資産価値が落ちにくい時計に共通する3つの条件

条件①:需要が国内だけに偏っていない(世界需要がある)

資産性が強いモデルは買い手が国内だけに限られません。欧州・北米・アジア・中東など複数市場に需要が分散しているため、相場が一時的に弱含んでも成立価格が崩れにくい傾向があります。鑑定現場では「売却相談が来た瞬間に複数の出口が見える」モデルほど査定が安定します。

条件②:スポーツモデル中心で相場の“芯”にいる

資産性が落ちにくいのは、ドレスウォッチよりもスポーツモデルが中心です。用途が広く、買い手が多く、回転が速いためです。さらに重要なのは、そのブランド内で相場の“芯”になっているかどうかです。芯とは、相場が動くときに真っ先に買いが入り、下落局面でも戻りが早い中心モデルを指します。

条件③:供給が絞られ、定価改定が中古相場に反映されやすい

正規で簡単に購入できるモデルは基本的に値崩れしやすく、供給が絞られているモデルほど定価改定の影響が中古相場に伝播しやすくなります。重要なのは「値上げ=必ず得」ではなく、「値上げが起きたときに中古が連動しやすい需給構造かどうか」です。

2026年時点で資産性が強い具体モデルと数字の見方

ロレックス:定価改定が相場に反映されやすい基準点

ロレックスは資産性の基準点として語られやすいブランドです。サブマリーナー デイト Ref.126610LNは、2026年1月の定価改定で旧定価1,570,800円から新定価1,683,000円へ上昇しています。買取相場は状態や付属品で幅がありますが、付属品完備・状態良好で2,100,000円〜2,600,000円前後が成立しやすいゾーンです。GMTマスターII Ref.126710BLROは定価1,747,900円前後に対し、買取相場は3,200,000円〜4,200,000円前後で推移しやすく、需給が特にタイトです。デイトナ Ref.126500LNは定価2,499,200円前後に対し、買取相場は4,800,000円〜5,630,000円前後が現実的な成立レンジとなり、供給制限と世界需要が資産性を強く支えています。

パテック フィリップ:資産性は高いがモデル選別がすべて

パテック フィリップはブランド全体の格付けが高い一方、資産性が安定するのは需要の厚いスポーツラインに限られます。アクアノート Ref.5167A-001は2026年時点の定価が3,960,000円前後とされ、買取相場は状態良好・付属品完備を前提に3,800,000円〜4,300,000円前後が見えやすいモデルです。一方で仕様差や年代、保証書条件による査定差が大きく、「出口が見える個体条件」での購入が重要になります。

オーデマ ピゲ:供給制限の強さが価格を下支え

オーデマ ピゲはロイヤルオークを中心に資産性が形成されます。ロイヤルオーク 15510ST系は国内定価4,400,000円前後に対し、買取相場は6,700,000円〜7,400,000円前後が成立しやすいゾーンです。ロレックスほど買い手の層は広くありませんが、供給制限が強く、条件が揃えば定価比で優位性を維持できます。

資産価値を守るために購入時に必ず見るべきポイント

付属品:保証書が資産性の土台になる

資産性が高いモデルほど、保証書の有無で査定レンジが大きく変わります。特にロレックス、パテック、APは保証書の整合性が重要視され、欠品があると成立点が下がりやすくなります。

外装状態:研磨の有無と打痕の有無

過度な研磨はシルエットを損ね評価を下げる要因になります。資産性が強いモデルほど未研磨寄りの個体が好まれ、外装状態がレンジを分けます。

買うタイミング:相場よりも買い方

相場の上下で判断するとブレやすくなります。重要なのは「相場の芯にいる型番を、条件の揃った個体で買う」ことです。芯のモデルは戻りが早く、出口が確保されやすい構造を持っています。

まとめ

高級時計は、正しく選べば身につけながら保有できる実物資産になり得ますが、条件を外すと値崩れして高額な消費になります。2026年時点で資産性が落ちにくい選び方は明確で、ロレックスは相場の芯にいる型番、パテックやAPは需要の厚いスポーツラインかつ条件の揃った個体に限定することです。購入候補が決まっている場合は、その型番の定価・成立レンジ・条件差まで含めて整理することで失敗を防げます。

ブランドレックス
鑑定士 千藤