私ブランド品鑑定歴20年の千藤です。

今回は2022年新作としてロレックスより発表された126720VTNRについて深堀していきたいと思います

 

 

GMTマスターⅡの歴史

まずはGMTマスターⅡについておさらいをしていきましょう。

GMTマスターⅡは1982年に初めて発表されてから現在も続く非常に長い間人気が下がる事のないロレックスの代表コレクションの1つです。

1950年頃から旅客機が一般の方でも乗れるようになり、海外旅行が当たり前の世の中になっていきました。
その際に起きるのが時差です。

タイムゾーンとも言われるこの時差は、現地に付いたら時計の針をずらす必要がありました。
しかし、その面倒な作業を無くしたのが、第2時間帯表示機能である「GMT機構」です。

GMT機構は、HOMEと言われる時刻時間ともう1つ国の時間帯を同時に確認する事が出来る機構です。
ロレックスが初めてGMT機構付きの時計を発表したのが1955年の事で、6542という型番の腕時計を発表しました。

 


初代GMTマスター 6542

 

その後様々なデザイン変更を経て、1982年に現在のGMTマスターⅡに続く初代GMTマスターⅡである16760が発表されました。


初代GMTマスターⅡ 16760(ファットレディ)

 

GMTマスターⅡからは、時針の単独操作が可能になった事で、第三時間帯まで表示できるようになりました。

現在ではGMTマスターⅠより少し厚いケースデザインから「ファットレディ」
という名前でも呼ばれています。
日本では「ファットレディ」と聞くとあまり良い意味にとらわれない方も多いと思いますが、
海外ではふくよかな女性は「非常に魅力的でセクシー」であるという認識が高く、

魅力的な時計という意味合いで使われています。

GMTマスターⅡは現在4世代目となっており、今回新しく発表された126720VTNRはデザインの変更なども考えると5世代目になります。

126720VTNRについて

ここからが本題ですが、2022年の新作として発表されたのが

126720VTNRです。

見た瞬間にお気づきになった方も多いと思いますが、
今回の126720VTNRは今までと大きく異なる事があります。

それが「デストロ」になっているという事です。
デストロとは、針操作や巻き上げを行う為の竜頭が左にあるタイプの時計の事です。
それにも驚きなのですが、今回のGMTは日付表示も左にあるという変わりよう。
このデザインは全く予想していませんでした。

最初この時計を見た時に、なぜ上下さかさまで写真を撮ったのだろうかと思ってしまいましたが、恥ずかしい勘
いをしていることに数秒後に気付きました。
先入観というのは怖い物です。

先ほどデストロという言葉を使いましたが、これは左利き用に作られたデザインで、
「レフティ」と呼ぶ人もいますね。
右利きの方は、行動の邪魔にならないように基本的に皆様左に時計を装着している方が多いと思います。
これは左利きの方は逆になるのは至極当然の事ですが、
そうなると右に竜頭が付いている為、針操作をする際に竜頭が腕側にある状態になり、非常に操作がしづらくなります。

それを解決したのがデストロという訳です。

デストロのデザインは、数あるブランドが発表しているモデルの中でも多くないデザインで、それだけ時計を左手に付ける方が多いという事です。

ロレックスは、多くの方のニーズに答えた時計を制作する事が多く、このような少数派のデザインを作る事は非常に珍しい。

製造がいつまで続くかは今の時点ではわかりませんが、もし短命だった場合はプレ値が付くことは間違いないであろうモデルです。

もう一つデザインで新しくなったのはベゼルのカラーです。
歴代GMTマスターは過去のモデルを参考にカラーリングされており、
ステンレス単体モデルでは2013年に製造された116710BLNR通称バットマンが製造されてから新色は出ていませんでしたので、約10年ぶりの新色になります。

※余談ですが、ステンレス以外では126711CHNRが黒とチョコレートベゼルを2018年に発表しています※

今後ステンレスモデルは10年ごとに新色がでるのかもしれないという予想も出来ますね。

定価はオイスターブレスとジュビリーブレスで異なり

オイスターブレス:¥1.224.300-
ジュビリーブレス:¥1.247.400-

となっています。

ここからは個人的な感想ですが、

「右で良かったのではないか?」
ここにきて「デストロ」を出す必要性はないのではないかなというのが素直な感想です。

確かにベゼルカラーを変えるだけでは新作としてインパクトは無いと思いますが、
人気なグリーンを使う訳ですし、ロレックスカラーともいえるグリーンカラーを使って
ロレックスのなかで異端と呼べるようなデザインにしたのはどういった意図があるのだろうか
今後の相場の動きが楽しみな物であるのは間違いない。

今後の相場予想

これからは、今までのGMTの市場価格から新しいモデルがどのような市場価格になるのか予想していきたいと思います。

GMTマスターは、現在定価より高い金額で取引されているモデルである、いわゆるプレ値が付いているコレクションです。

定価で購入する事が非常に難しいモデルであり、今回の126720VTNRも同様な状況になるのは間違いないと思います。

特に、デストロという他にはないデザインの為、他のGMTと比べても生産本数が少なくなる可能性が高い為、他のGMTよりも高いプレ値が付く可能性がある。

定価が約125万円ではありますが、市場価格の初動は200万円を軽く超えてくると予想します。

市場価格は需要と供給が非常に重要な要素になりますが、
供給が少ないのは大いに予想が出来る為、後は需要がどこまで伸びるかが肝になります。

先ほどお話しさせて頂いた通り、今回の126720VTNRは異端と言って良いモデルだと私は思います。
その為、動きが読みづらいのも事実です。

もしかしたら、126720VTNRだけ他のGMTよりも市場価格が跳ね上がる可能性もあり、デザインが奇抜な為に需要が低く定価とあまり変わらない市場価格になる可能性もあります。

こればかりは販売されてからでないとわからない物ではありますが、私の予想は他のGMTより金額が上がるのではないかと考えています。

ロレックスの人気カラーであるグリーンに人気モデルであるGMTマスターⅡ
他と違う奇抜なデザインという金額が上がる要素としては十二分にある為です。

今後の相場に注目したいモデルの登場です。

 

まとめ

今回はロレックスの新作である126720VTNRについて深堀してみました。

デザインだけでいうのであれば、個人的には微妙だなぁというのが素直な意見ですが、

業界全体からいうと非常に挑戦的で面白い新作では無いかと思います。

販売されて市場価格が確定し始めたらまたピックアップしたいと思います。