高級時計の資産価値を語る際、多くの方がまず思い浮かべるのがロレックスですが、実際の査定現場では「ロレックス以外でも十分に資産として成立する時計」は確実に存在します。重要なのはブランドの格式やイメージではなく、中古市場における流動性、価格の安定性、定価と買取価格の乖離、そして長期的な評価の残り方です。本記事では鑑定士の立場から、ロレックスを除いた主要高級時計ブランドを資産価値という観点で格付けし、実際の定価と直近の買取相場を具体的な数字で示しながら解説します。

資産価値の格付け基準について

なぜブランド格付けが必要なのか

資産価値という言葉は曖昧に使われがちですが、時計の場合は明確な判断軸が存在します。査定現場では「高く売れた実績」だけでなく「いつでも売れるか」「価格が崩れにくいか」「相場が読めるか」が重視されます。これらを総合的に見て初めて資産として成立するかどうかが判断されます。

本記事で採用する評価軸

本記事では以下の3点を軸に格付けを行います。第一に市場流動性、すなわち買取件数と回転率。第二に価格安定性、短期的な相場変動の幅。第三に定価比率、定価に対してどの水準で買取が成立しているかです。

Sランク|ロレックスに匹敵する資産価値を持つブランド

パテック フィリップ(Patek Philippe)

ノーチラス 5711/1Aは正規定価が約3,740,000円、直近の国内買取相場は12,000,000円〜16,000,000円前後で推移しています。定価比は約320%〜430%となり、ロレックスのデイトナを上回るケースも珍しくありません。生産終了後も需要が衰えず、供給量が極端に少ないため、長期的な資産価値は極めて高水準です。アクアノート 5167Aは定価約3,520,000円、買取相場7,000,000円〜9,000,000円前後で推移し、定価比は約200%〜255%。ノーチラスほどの爆発力はありませんが、相場の安定性と流動性の高さから、資産時計として非常に優秀なモデルです。

オーデマ ピゲ(Audemars Piguet)

ロイヤルオーク 15500STは正規定価約3,850,000円、買取相場6,000,000円〜7,500,000円前後で推移しています。定価比は約155%〜195%。スポーツラグジュアリーの代表格として世界的に需要が集中しており、相場が崩れにくい点が評価されています。

Aランク|堅実に資産価値を維持するブランド

グランドセイコー(Grand Seiko)

SLGH005(白樺)は定価約1,155,000円、買取相場750,000円〜900,000円前後で、定価比は約65%〜78%です。爆発的なプレミアは付きませんが、価格が大きく崩れず、安定した需要がある点が評価されています。SBGH279は定価約792,000円、買取相場500,000円〜650,000円前後で、定価比は約63%〜82%。実用性と精度の高さから中古市場での評価が安定しています。

オメガ(Omega)

スピードマスター プロフェッショナル 310.30.42.50.01.001は定価約1,067,000円、買取相場700,000円〜850,000円前後。定価比は約66%〜80%で、月面着陸モデルとしての歴史的価値が評価され、長期的に相場が維持されています。シーマスター プラネットオーシャン 215.30.44.21.01.001は定価約1,155,000円、買取相場800,000円〜950,000円前後で、定価比は約69%〜82%。ダイバーズモデルとして安定した需要があります。

Bランク|モデル選びで差が出るブランド

ブライトリング(Breitling)

ナビタイマー B01 クロノグラフ 43は定価約1,045,000円、買取相場600,000円〜750,000円前後で、定価比は約57%〜72%。人気モデルは一定の評価を維持しますが、資産性はモデル依存が強くなります。

タグ・ホイヤー(TAG Heuer)

カレラ キャリバー ホイヤー02は定価約605,000円、買取相場350,000円〜450,000円前後で、定価比は約58%〜74%。価格帯を考えると悪くはありませんが、資産運用目的としては限定的です。

Cランク|デザイン重視で資産性は控えめ

カルティエ(Cartier)

タンク ルイ カルティエは定価約880,000円、買取相場450,000円〜600,000円前後で、定価比は約51%〜68%。デザイン性とブランド力は高いものの、資産価値という観点では実用・嗜好品寄りの評価になります。

鑑定士視点での総括と判断軸

ロレックス以外で資産価値を重視する場合、最優先で検討すべきはパテック フィリップとオーデマ ピゲです。この2ブランドは流動性・安定性・定価比率のすべてが高水準で、長期保有でも評価が残りやすい傾向があります。次点としてグランドセイコーやオメガは「価格を大きく落とさずに保有できる実用資産」として評価できます。一方で、Bランク以下はモデル選定を誤ると資産性が大きく下がるため注意が必要です。

最終的には「どのブランドか」ではなく「どの型番か」「どのタイミングか」が資産価値を左右します。売却・保有・買い替えの判断に迷われた場合は、必ず現在の実勢相場を基準に考えることが重要です。

ブランドレックス
鑑定士 千藤