ロレックスのアンティークを売却しようとした際、「正規修理なら安心だと思っていたのに、なぜ評価が下がるのか」「修理費用をかけたのに、結果的に損になることはあるのか」と疑問を持たれる方は少なくありません。現行モデルであれば、正規修理は評価を安定させる要素になりやすい一方、アンティークロレックスでは事情が異なります。アンティーク市場では“時計としての性能”よりも、“当時のまま残っているかどうか”が価値の中心になるため、正規修理であっても内容次第では販売価格が大きく下がるケースがあります。修理費用も年々上昇しているため、価値下落と修理費が重なると、結果として大きなマイナスになり得ます。

結論:アンティークロレックスは正規修理でも価値が下がることがある

アンティークロレックスにおいて、正規修理は必ずしも価値向上につながりません。正規修理は精度や安全性を優先するため、文字盤や針などの部品交換が行われることがありますが、これがコレクター市場で重視される「オリジナル性」を損なう場合があります。その結果、販売市場が分かれ、販売価格帯そのものが下に移動します。販売価格が変われば、買取価格も同様に変動します。

アンティークで評価を左右する正規修理の交換部位

文字盤(サービスダイヤルへの交換)

アンティークで最も影響が大きいのが文字盤です。オリジナル文字盤は、その個体の価値の核になる要素であり、サービスダイヤルに交換されると「当時のまま」という評価から外れます。見た目が整っても、コレクター市場では別の市場に分類され、販売価格帯が一段下がります。

針(夜光の色味が揃わなくなる)

針の交換も評価に影響します。アンティークでは、文字盤と針の夜光が同じ経年で揃っていることが重視されます。針のみ新しくなると色味が合わず、オリジナル性が崩れたと判断されやすくなります。

ベゼル・インサート・リューズ

モデルによっては、ベゼルやインサート、リューズの交換で年代整合性が崩れ、評価が割れることがあります。アンティークでは「当時仕様の組み合わせ」が価値になるため、ここに手が入ると販売価格が下がる場合があります。

販売価格で見るオリジナル個体と交換個体の差

アンティークロレックスでは、同じ型番であっても、文字盤の状態によって販売価格帯が大きく分かれます。以下は、国内中古市場で見られる代表的な価格帯の例です。

サブマリーナ Ref.5513

オリジナル文字盤の場合:1,300万円〜1,800万円

文字盤交換(サービスダイヤル)の場合:700万円〜1,000万円

価格差:おおよそ500万円〜800万円

GMTマスター Ref.1675

オリジナル文字盤(評価が強い個体):1,400万円〜2,200万円

文字盤・針交換ありの個体:800万円〜1,100万円

価格差:おおよそ400万円〜900万円

このように、文字盤や針の交換によって販売市場が分かれ、販売価格が数百万単位で変わる構造になっています。買取価格は販売価格を前提に算出されるため、同様の差が査定額にも反映されます。

正規修理費用が高くなっている点にも注意

正規修理(日本ロレックス)のオーバーホール費用は近年上昇傾向にあり、シンプルなモデルでも数万円後半から、スポーツモデルでは7万円以上、部品交換が加わるとさらに費用がかかります。アンティークで性能優先の交換が行われた場合、修理費を支払ったうえで、販売価格帯が下に移動するという二重のマイナスが生じる可能性があります。

相場・価格・評価の判断軸を整理する

アンティークロレックスの正規修理を検討する際は、その時計を「資産価値として残したいのか」「実用時計として使いたいのか」を明確にする必要があります。資産価値を重視する場合、文字盤や針といったオリジナル性に関わる部位の交換は慎重に考えるべきです。一方、実用性を優先するのであれば、性能重視の修理が合理的な場合もあります。

ブランド品全体の買取相場がどのように形成されているかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
ブランド品の買取相場について

まとめ:アンティークは修理内容次第で価値が大きく変わる

ロレックスのアンティークでは、正規修理であっても内容次第で販売価格が数百万単位で変わることがあります。修理費用が上がっている現在、修理費と価値下落が同時に起きると、結果として大きなマイナスになります。アンティークでは「直して安心」ではなく、「何を守るべきか」を見極めたうえで判断することが重要です。

ブランドレックス
鑑定士 千藤