ロレックスのアンティークは、同じ型番でも販売価格が大きく分かれます。「5513ならこのくらい」「1675ならこのくらい」と一言で言い切れないのは、アンティークが“時計としての性能”だけで評価されていないからです。文字盤や針の当時仕様、付属品(保証書・箱)の有無、年式の位置づけ、ケースのコンディション、整合性(交換歴)など、複数の要素が重なって「どの市場(どの買い手層)で評価される個体か」が決まります。本記事では、販売価格ベースの具体例を交えながら、アンティークロレックスの価値がどこで決まるのかを整理します。

結論:アンティークの価格は「型番」ではなく“個体の市場ランク”で決まります

アンティークロレックスは、同じRefでも「一般中古として評価される個体」と「コレクター市場で評価される個体」に分かれます。この差が、そのまま販売価格の差になります。実際にRef.5513は国内販売のレンジだけでも約170万円台から、数百万円台、さらに上の帯まで幅が出ます。Ref.1675も販売価格が約280万円台から約789万円台まで同一Ref内で並び、Ref.1016も200万円台前後から500万円台、さらに上の帯まで並ぶことがあります。型番だけで相場を決めようとするとズレるのは、この構造が理由です。

価値を決める要素①:文字盤と針の「当時のまま(整合性)」

アンティークで最も価格差が出やすいのが、文字盤と針です。夜光の焼け方、質感、針との色味の一致、当時仕様としての整合性が強い個体は、コレクター市場で評価されやすく、販売価格帯が上に移動します。逆に、文字盤や針が交換されていたり、雰囲気が揃っていない個体は一般中古の帯に寄りやすく、同じRefでも価格が大きく下がります。Ref.1675が分かりやすく、サークルミラー・ミラーダイヤルの帯では600万〜700万円台の販売が見られる一方、後年寄りのダイヤル帯では200万〜300万円台で並ぶことがあります。こうした「ダイヤル世代による別市場化」が、アンティークの価格差の中心です。

価値を決める要素②:付属品(保証書・箱)の有無

アンティークでも、保証書や箱が残っている個体は販売時の説明がしやすく、買い手の安心感が増します。その結果、同じ個体条件でも販売価格が上の帯に寄りやすく、評価が安定します。例えばRef.5513は、箱・保証書付きの個体が190万円前後で販売されていた例がある一方で、同じ5513でも状態・世代によって300万円台、さらには600万円台の販売例が見られます。付属品はそれ単体で価格を決めるというより、「上の市場に入りやすくする材料」として効きます。

またRef.1016は付属品の影響が比較的分かりやすく、保証書・BOX・メーカー修理明細が付いた個体が約369万円で販売されている一方、同じRef.1016でも200万円台の販売帯が存在します。ここは個体差(状態・針交換など)も絡みますが、「保証書がある個体は上の帯に乗りやすい」という傾向は実務上も強いです。

価値を決める要素③:年式(年代の位置づけ)

年式は「古いほど高い」という単純な話ではありません。ただしアンティークでは、年代によって“評価されやすい仕様”が異なり、そこが販売価格を分けます。Ref.1675で1960年代の評価帯(ミラー〜サークルミラー)が高く出やすいのは、その年代の仕様が支持されやすい市場があるためです。Ref.5513も同様で、同じ5513でも「どの年代・どの仕様の個体か」によって市場が分かれ、販売価格帯が変わります。

価値を決める要素④:ケース・ブレスのコンディション(痩せ・伸び・雰囲気)

アンティークで見落とされがちなのが、ケースのシルエットとブレスの状態です。ケースの痩せ、エッジ感、ラグの雰囲気、ブレスの伸びは、写真では伝わりにくい一方で、実物を見る買い手ほど強く評価します。ここが良い個体は上の市場に入りやすく、販売価格帯が上がります。逆に、雰囲気が崩れている個体は買い手が限られ、販売価格が下の帯に寄りやすくなります。

価値を決める要素⑤:整合性(交換歴・修理歴の影響)

アンティークロレックスは「直してある=高い」ではありません。文字盤や針などの主要部位に交換が入ると、当時のままという評価から外れ、販売市場が変わります。その結果、販売価格帯が下に移動し、買取価格も同様に下がります。ここは相場・価格・評価・判断軸が最もズレやすいポイントで、現行ロレックスの感覚で「正規修理=安心・価値上昇」と捉えると、アンティークでは逆効果になるケースがあります。

ブランド品全体の買取相場がどのように形成されているかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
ブランド品の買取相場について

販売価格の“幅”は、そのまま買取価格の幅になります

買取価格は、最終的に販売市場でどの帯で成立させられるかを前提に組み立てられます。したがって、アンティークの販売価格が200万台から700万台まで同一Refで広がっている以上、買取価格も同様に大きな幅で変動します。型番だけで判断せず、「この個体はどの市場(どの買い手層)に刺さる条件か」を整理することが、後悔のない売却につながります。

まとめ:アンティークは“型番相場”ではなく「個体の市場」を見て判断する

アンティークロレックスの価値は、文字盤・針の整合性、付属品(保証書・箱)、年式の位置づけ、ケース・ブレスのコンディション、交換歴の有無といった要素の積み重ねで決まります。同じRefでも販売価格が大きく分かれるのは、個体が属する市場が違うからです。売却を検討される際は、型番だけで相場を当てにいくのではなく、個体条件を整理し、どの市場で評価される時計なのかを見極めたうえで比較されることをおすすめします。

ブランドレックス
鑑定士 千藤