アンティークロレックスをお持ち込みいただいた際、「その場で買取できますか?」という質問は実務で実際に出ます。特にデイトナ Ref.6263 のように高額で個体差が大きいモデルほど、この問いは自然です。アンティークは、同じ型番でも文字盤・針・ケースの雰囲気・整合性で評価が大きく割れ、販売価格帯が別市場に分かれます。そのため、目利きがその場で完結できるか、外部確認や預かりが入るかで、査定の前提(どの市場の価格帯で成立させるか)が変わり、結果として買取価格も変動します。

結論:その場で完結しない査定ほど、価格は保守的になりやすい

アンティークロレックスは、現行品のように「型番とコンディション」だけで即決しにくい商品です。真贋だけではなく、当時仕様としての整合性、交換パーツの有無、夜光の一致、ケースの痩せ方、ブレスの雰囲気など、評価の核が“現物のディテール”にあります。ここをその場で判断できない場合、店は「預かり」や「裏で確認」や「わかる店にZoomで見せる」といった工程を挟むことになります。この時点で、査定は上の販売価格帯(コレクター評価)ではなく、確実に成立させるための下の価格帯(一般中古寄り、または業者間価格寄り)に寄せられやすくなります。

なぜ「裏確認」「Zoom確認」「預かり」が入ると高くなりにくいのか

この工程が入ると“価格の設計”が変わります。理由は二つあります。第一に、最終判断者が別になることで、万が一に備えた安全幅が広く取られます。アンティークは後からの指摘(文字盤世代、針の不一致、サービスパーツ混在など)が致命的になり得るため、判断者は「上で決める」より「事故らない帯で決める」方向に寄りやすいのが実務です。第二に、実質的な中間工程が発生します。裏に持っていく、Zoomで外部に見せる、わかる店に確認する、という時点で“判断と出口(売り先)の権限”が外に移り、その分の中間マージンや調整が査定額に反映されやすくなります。これは悪意というより、構造としてそうならざるを得ない場面が多い、というのが現場の実感です。

販売価格ベースで見る「その場で見れる査定」と「外部確認前提」の差

アンティークは、同じ型番でも販売価格帯が別市場に分かれます。デイトナ Ref.6263 を例にすると、“わかる人がその場で現物を見て”オリジナル性や整合性を評価できる個体は、販売想定が上の帯(例:3,500万円〜5,000万円超)で組めることがあります。一方で、外部確認前提になった瞬間、販売想定は下の帯(例:2,500万円〜3,200万円前後)に寄せられることが現実に起こります。差は300万円〜1,500万円以上になることもあり、買取価格も販売想定に連動するため同様に動きます。ここで重要なのは、アンティークは「型番の相場」ではなく「その個体が属する市場の帯」で価格が決まるという点です。同じ6263でも、上の市場(コレクター評価)で成立できる個体か、下の市場(一般中古・業者間寄り)で成立させる個体かで、価格のレンジが根本から変わります。

「6263、その場で買取できますか?」と聞かれるのは合理的です

この質問が実務で出る理由は明確です。アンティークは、その場で見て判断できる店ほど、上の販売価格帯を前提に査定を組み立てやすいからです。逆に、預かりや外部確認が入る店は、下の帯で安全に組む傾向が出やすい。売り手側がそれを体感しているからこそ、「その場で買取できますか?」という確認になります。ここでのポイントは、相手を急かすことではなく、店の体制を確認して“どの市場の価格帯で見ているか”を揃えることです。

価格が伸びやすい店の見極め方

アンティークで価格を伸ばすなら、「その場で見れる」ことに加えて、次の要素が揃っている店が有利になりやすいです。第一に、アンティークの在庫が常に一定数ある(=売り先と回転のイメージが具体)。第二に、ダイヤル世代や整合性の話が自然に出る(=判断軸がアンティーク基準)。第三に、「預かりになる理由」と「どういう条件なら上で見れるか」を説明できる(=安全幅の根拠が明確)。反対に、会話が現行品の査定ロジックのまま進む、裏に持っていくことが前提で説明が薄い、価格の前提条件が揃わない、といった場合は、下の帯で査定される可能性が上がります。

ブランド品全体の買取相場がどのように形成されているかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
ブランド品の買取相場につい

私の見解:アンティークは「どこで売るか」より「どこで見てもらうか」で結果が変わります

アンティークロレックスは、売却先の名前よりも、評価が完結する体制の有無が結果を左右しやすい商材です。外部確認や預かりが入ると、マージンと安全幅が乗り、査定は下の市場の帯に寄りやすくなります。一方、その場で判断できる店は、上の市場の帯を前提に組み立てられる可能性が上がります。だからこそ「その場で買取できますか?」という質問は、アンティークにおいて非常に合理的です。価格を最大化するためには、まず査定の前提(どの市場で成立させるか)を揃えることが重要になります。

まとめ:その場で完結する査定は、上の価格帯を前提にしやすい

アンティークロレックスは、同じ型番でも個体が属する市場で販売価格帯が分かれ、その差は数百万円から場合によっては1,000万円以上になることがあります。預かりや外部確認が入る査定は、構造上、下の帯に寄りやすく、価格が伸びにくい傾向があります。売却を検討する際は、まず「その場で見て判断できるか」を確認し、査定の前提がどの帯に置かれているかを揃えることが、後悔のない結果につながります。

ブランドレックス
鑑定士 千藤