エルメスは、ブランドバッグの中でも明確に“別枠”として扱われる存在です。その理由は、単なる人気や希少性ではなく、価格形成の仕組みそのものが他ブランドと異なる点にあります。定価改定の頻度と上昇幅、供給制限、顧客管理、そして中古市場での需要構造が重なり、エルメスは「使っても価値が落ちにくい」どころか、「条件次第では価値が上がる」ブランドとして認識されています。本記事では、エルメス全体を俯瞰しながら、主要モデルの定価推移と中古相場を具体的な数字で整理し、今売るべきか、持つべきかを判断できる材料を提示します。

エルメスが資産価値ブランドと呼ばれる理由

 エルメスの最大の特徴は、需要に対して供給を増やさない点です。バーキンやケリーといった主力モデルは、需要が高まっても生産数を急激に増やすことはなく、結果として新品が常に不足する状態が続きます。この供給制限に加え、ほぼ毎年行われる定価改定が相場を押し上げ、中古市場では「定価を基準に価格が決まる」という構造が成立しています。つまり、価格は下から積み上がるのではなく、定価から逆算されるのがエルメスの特徴です。

主要モデルの定価推移(代表例)

 代表的なモデルで定価の変化を見てみます。バーキン30(トゴ素材)は、過去に定価1,200,000円前後だった時期がありましたが、現在は1,700,000円前後まで上昇しています。差額は約+500,000円、上昇率は約40%です。ケリー28(トゴ素材)も同様に、過去定価1,250,000円前後から、現在は1,800,000円前後まで上昇しており、約+550,000円、約44%の上昇となります。ボリード27も、過去に定価800,000円台だったものが、現在は1,100,000円前後となり、約30%以上の上昇が見られます。

中古相場が定価を上回る理由

 エルメスの中古相場は、「新品が手に入らない」という状況を強く反映します。バーキンやケリーでは、定価を上回る中古価格が成立するケースも珍しくありません。たとえば、バーキン30(トゴ・人気色)では、定価1,700,000円前後に対し、中古市場で2,000,000円以上の成立例が見られることもあります。これは定価比で約115〜120%水準です。すべての個体がこの水準になるわけではありませんが、条件が揃えば「中古=定価以下」という一般的な考え方が当てはまらないのがエルメスです。

エルメスの中で“資産性が分かれやすいモデル”

 エルメスはすべてが同じ資産価値を持つわけではありません。バーキン、ケリー、コンスタンスは資産性が最も強く、次いでピコタン、エヴリン、ガーデンパーティーと続きます。たとえば、ピコタンロックPMは過去定価300,000円台だったものが、現在は500,000円前後となり、約60%以上上昇しています。一方、ガーデンパーティーTPMは安定感はあるものの、上昇幅は比較的緩やかで、定価比80〜90%前後の中古成立が多く見られます。この違いを理解することが、売却判断では非常に重要です。

査定額を左右する共通ポイント

・サイズ(30前後は需要が厚く評価が安定しやすい)・素材(トゴ、エプソン、スイフトなど。定番素材ほど評価が安定)・色(ブラック、ゴールド、エトゥープなどは強い)・金具の色(ゴールド金具は安定、シルバー金具は好みが分かれる)・角スレや型崩れ(軽度かどうかで大きな差が出る)・付属品(箱、保存袋、カデナ、クロシェットなど)

今回の鑑定士コメント

 エルメスは「売るか迷うブランド」の代表格ですが、数字で見ると判断はシンプルです。定価が30〜40%以上上昇しているモデルでは、中古相場もそれに連動しています。特にバーキン、ケリー、コンスタンスは、状態と条件次第で定価以上の評価が成立する数少ないバッグです。一方で、使用感が進むと評価が落ちやすいモデルもあるため、“持ち続ける=必ず得”ではありません。モデルと条件を整理することが重要です。

まとめ

 エルメスの資産価値は、供給制限と定価上昇によって支えられています。バーキンやケリーでは、定価比115%以上での中古成立例もあり、他ブランドとは異なる価格構造が存在します。売却を迷う場合は、「モデル名・サイズ・素材・色・状態」を整理し、今の定価と中古成立水準を基準に判断することが、最も納得感のある選択につながります。ブランドレックス 鑑定士 千藤